NO:792

 おはようございます。
今朝の大阪は朝から雨がよく降っています。お出掛けの際はお気を付け下さいね。

 さて、今週木曜日の産経新聞の朝刊に、「孤独死7万人超どう向き合う」という記事が出ていました。昨年全国の警察が取り扱った一人暮らしの孤独死の数が76,020人だったそうで、人生の最後について考えさせられる記事でした。

 私も来月で67歳になりますが、最近「人生は『生き方』も大事だが、『死に方』の方がもっと大事なのでは?」、また、昔の武士がよく「死に場所」という言葉を使っていましたが、少し分かるような気持ちがしています。

 やさしさ通心①の小冊子の最後にも書かせて頂きましたが、私は若い頃から「人生は晩年こそ勝負!」、いくら若い頃にお金や地位を得て、好き放題に過ごせたとしても、晩年になってお金がなくて生活に困ったり、家族にも相手にされず一人ぼっちだったら、どんなに惨めで悲惨な人生か?子供たちにもそんなことを話して来ましたが、最近は特に、晩年の中でも最晩年、人は誰でも、自分で自分のことが出来なくなる時が必ず来ます。

 食事もトイレもお風呂も、身内であるか他人であるかは別にして、誰かに頼らなければならない時が必ず来ます。よく健康寿命という言葉も耳にしますが、それが短期間で終わる人もいれば、中には何年も何年も誰かにお世話にならなければならない人もいます。

 そしてその期間は自分では分かりません。ただ言えることは、その介護を受けたあとの行き着く先とは、「終わり」とは死です。

 お金も財産も地位も名誉も、思い出さえも全てこの世に置いて、行く着く先が死です。
そんな死の前段階である最晩年、自分で自分のことが出来なくなった期間、「いかに心が穏やかに過ごせるか?」、これが人生の勝負なのではないか?と、勝手に思っています。

 昭和58(1983)年に楢山節考(ならやまぶしこう)という、※姥捨山の映画が制作されましたが、人生の最後を考えさせられる大変良い映画でした。
※ 姥捨山(うばすてやま)=ある年齢以上の老人や働けなくなった老人を山に捨てに行くという伝説。

 来週のやさしさ通心でご紹介させて頂きます。
今朝のやさしさ通心では、今年5月9日に発売されたばかりの新刊、『衝撃ルポ 介護大崩壊』?お金があっても安心できない!? という本の中から、何人もの利用者さんの死を経験された介護士さんの切実な言葉をご紹介させて頂きます。

『介護とは死の前段階』

 「よく頑張ったね」棺(ひつぎ)の中で眠るご遺体に、そっと話しかける女性。
手に持っていた花びらを棺の中に添え、目を閉じて手を合わせたのは介護師の鈴木涼子さん(仮名)だ。取材時に65歳だった鈴木さんも、いわゆ高齢者。仕事柄、自分が介護を担当した高齢者が亡くなることは、もう何度も経験している。

 だが、何度経験しても、胸が締め付けられるほどの寂しさに襲われるという。
葬儀では、まだ元気だった頃の故人を思い出し、涙が止まらないこともあるそうだ。

 この日、最期のお別れを済ませた鈴木さんは、これから再び職場に戻る。
駅に向かって歩きながら、彼女は一言こう話した。「頑張った先に死があるんですよね」一体どういう意味なんだろうかと思っていたら、鈴木さんは続けた。

「私たちは、いつも利用者さんに『頑張って』と声をかけ、励ましています。
でも私は何に対して頑張ってほしいと思って声をかけていたのかと、歳を重ねるごとに考えるようになったんです。リハビリを頑張るのか、毎日生きることに頑張るのか。

 病気と闘うのに頑張るのか。頑張っても、人は必ず亡くなるでしょ。
体が弱ってくると好きなものを食べられない。家族とは疎遠になって、面会に来てもらえない人も多い。病院に運ばれれば、体中に管(くだ)を巻かれ延命される。
 痛くて苦しい状況を見て、頑張って欲しいとは思いますが、伝えたいのはその言葉じゃないような気がするんです。本当は、『頑張って』というよりも『最期の瞬間まで人生を楽しんで』ということを伝えたいんじゃないかって」鈴木さんの言葉は今も印象に残っている。

 介護の先には死がある。介護は死を迎える前段階を指すともいえる。
だが、高齢者を前にして死について語るのは躊躇(ちゅうちょ)しがちだ。本当は、介護される本人と家族が、死についてもっと語るべきではないかと思う。

「どう死にたいか」を考えることは、「どう人生を全うしたいか」を考えることでもあるはずだ。
そして、「どう人生を全うしたいか」を考えると、今度は「どんな介護をされたいか」ということにもつながってくる。

 ところが、どんな介護をしてほしいのかという本人の要望を叶えるのが年々難しくなってきている。その理由の1つに、介護の担い手が不足し、さらに高齢化しているという問題があるからだ。

 それは、在宅での介護も、施設での介護も同じだといえる。
内閣府がまとめた。『令和5年版高齢社会白書』によると、要介護者等から見た主な介護者の続柄は、同居している人が54.4%となっている。

 その主な内訳は、配偶者が23.8%で、子が20.7%。そして男性が35%、女性が65%と、女性が多い。
また、要介護者等と同居している主な介護者の年齢について見ると、男性では72.4%、女性では73.8%が60歳以上であり、「老老介護」のケースが相当数存在していることがわかる。

【介護大崩壊 甚野博則 著 宝島社】
第一章 高齢者が高齢者を介護する時代 より