はじめに

 まずは、一通のお手紙からご紹介させて頂きます。

家族を救ってくれた本
 『たった一つの命だから』という小さな本を手にしたのは、昨年12月のことでした。
送ってくれた九州の友人に、心から感謝しています。
なぜなら、この小さな本が、私の家族を救ってくれたからです。
 昨年の夏頃から、中二の娘のことで、我が家は沈鬱な空気に覆われていました。
詳細はお話できませんが、とにかく妻も私もどうしていいものか頭を抱え、学校にも相談しました。
ただ、学校に相談したことを娘が知り、娘は怒り心頭で、それ以来、一切口を聞かなくなりました。
そういう状態になった時に、『たった一つの命だから』の本を手にしたのです。
 私は一気に読みました。
感動しました。心が洗われました。そして、本に掲載されていたメッセージに啓発されて、数日後、私は娘宛に手紙を書きました。
読んでくれる可能性は、限りなくゼロに近いとは思いましたが、父親としての私の気持ちを素直に書きました。
 そして、『たった一つの命だから』の本と一緒に娘に渡したのです。
なしのつぶては最初から覚悟していたものの、何の反応も見せない娘に、私は、精神の疲労がピークに達し、体調まで崩してしまいました。
 それから年が明け、立春を過ぎたある日、仕事を終え帰宅すると、なんと私の机の上に娘からの手紙が置いてあったのです。
手紙には、娘のストレートな気持ちが綴られていました。
娘は、「本気で死ぬことを考えた」と書いてありました。
子供だと思っていた娘は、14歳の一人の人間として、真剣に自分自身と向き合っていたのです。
 そして、悩んで、苦しんで、死を選択しようとしていたのです。
しかし、私の手紙を読み、そして、『たった一つの命だから』の本を何度も何度も読み、娘は、「今は、絶対に死ぬことはしない。どんなことがあっても生きていく」という結論に至ったというのです。
『たった一つの命だから』の本は、我が家の危機を救ってくれました。
                                  無力な父親より

 これは、〝NPO法人たった一つの命”に届いた手紙で、「たった一つの命だから」とは、14歳の時に骨肉腫という骨のガンを発症し、利き腕の右腕を切断した少女が、16歳で亡くなる直前、左手で年賀状に書いた言葉で、その後の〝命を守る運動”のきっかけになった言葉です。
 「たった一つの命だから」につなぐメッセージを集めよう!という運動が、青年や主婦たちを中心にはじまり、そしてそれは思いもよらず広がり、今では、集まった言葉や文章を紹介する朗読会を通じて、命の大切さや家族愛、親子、夫婦の愛、友情を訴える活動を行っています。
 私が、はじめてこの朗読会を聞いたのは2011年のことですが、大変感銘を受け、一人でも多くの人に聞いて欲しい。特に、日本の未来を担う子供たちに聞いて欲しい。そうすれば、今、社会問題になっているイジメや虐待、子供たちの自殺も減るのではないかと思ったのです。
 そしてそれ以来、私が行っている、この『やさしさ通心』の活動とは別に、個人的に応援して行こうと心に決めました。

 今年は、新型コロナウイルスの影響で、改めて命の大切さを知った!という方や、緊急事態宣言で自宅にいる時間も長く、ご家族やお子さんのことについても、色々考えるきっかけになったという方も多いと思います。
 今回の『やさしさ通心④』では、家族愛や子育て、障がい者の方がいかに大切な存在であるかなどのお話をまとめました。
 尚、冒頭の手紙の中にあった『たった一つの命だから』の本がご希望の方は、最終ページからお問い合わせ下さい。

目次

  • はじめに
  • 第1話 『最後に伝えたかったこと』
  • 第2話 『統合失調症の母との歩み』
  • 第3話 『親の姿勢』
  • 第4話 『母』
  • 第5話 『家庭とは』
  • 第6話 『説教は何の意味もない』
  • 第7話 『養護学校教諭が語る〝本当のこと”』
  • 第8話 『妹は私の誇りです』
  • 第9話 『ぼくは16歳、本当はイジメられています』
  • 第10話 『ファミリーの語源』
  • おわりに
  • 『子は親の鏡』