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おはようございます。
まずは「お知らせ」からさせて頂きます。
来週22日(水)の午後1時15分から、多くの皆様にご支援頂いております『日の丸裁判』(国旗バッチ剥奪訴訟)の判決が、大阪地方裁判所であります。
来週のやさしさ通心でもご報告させて頂きますが、もしお時間がございましたら応援にお越し下さいね。
さあ、今朝の大阪は大変良いお天気になりました。
今朝のお話は、先週日曜日は母の日でしたので、そんな母、妻への思いのお話です。
『“涙活” 心を潤すラブレター』
(株)ブック・ブリッジ
代表取締役社長 橋本昌人
「一粒の涙で、ストレス解消効果が1週間続く」
そんな研究結果を東京女子医科大学が発表しました。
涙には種類があります。
心が動いて出る涙は「情動の涙」といいます。これは、ストレス解消効果のある「副腎皮質刺激ホルモン」が出るそうです。
情動の涙の中でも一番効果があるのが「共感の涙」です。つまり、他人のために泣く涙です。
そんな涙の効果に着目したのが「涙活」(るいかつ)です。涙活のコンテンツとして僕が一番お勧めしているのが「ラブレター」です。
誰かが誰かに書く感謝の気持ちや愛情がこもった手紙を僕はラブレターと呼んでいます。僕は放送作家の仕事をしている関係で、番組に寄せられる多くのラブレターと出会いました。
そんな手紙は人の心を掴み揺さぶることを実感してきました。今から紹介する手紙は、皆さんの知らない方が書いた手紙です。でもその思いに心が揺さぶられ、共感力でジーンときて涙が出たらストレス解消になるんです。
以下は、僕が涙活をするようになったきっかけの手紙です。ある飲食店がありました。お店の大将は元気で笑顔で、いつも僕を励ましてくれました。
下ネタが多く、ツッコミどころ満載の大将でした。奥さんはいなくて、たまに娘さんが手伝いに来ていました。娘さんが結婚する時、大将は娘さんに手紙を書きました。そして大将がその手紙を僕にもくれたのです。
手紙を読んで、「あの陽気な大将に、こんな出来事があったとは??」と驚きました。
「人にはたくさんの隠れた思いがある。でも人は信じるに足りる生き物や」と思わせられた手紙です。娘さんの名前は「ミサトさん」、当時、大将は60代前半くらいでした。
『あの遊園地で、またみんなで笑おな』
娘・ミサトへ
いよいよ来月、結婚するんやね。おめでとう。ジューン・ブライドに憧れていたはずなのに、きみは結局、お母さんの旅立った8月を式の日に選びました。
お母さんも天国で喜んでいるでしょう。
あなたの母親であり私の妻であった、我々の最愛の女性は、ある小さな記事として新聞にも掲載された交通事故により、きみがまだ6歳の時に亡くなりました。突然すぎて悲しみ抜いて、途方に暮れて精神的に参ってしまった私は、死のうとしたんです。
バカなことに、きみを連れてお母さんを追いかけようとしました。その日、最後の思い出にと、家族でよく出かけた遊園地に2人で行きました。
きみは嬉しそうに、はしゃぎ回った。いつも家族で乗ったメリーゴーランドにひとりで乗るきみを、私は精一杯の笑顔を作って、だけど力なく手を振って、きみが「お父さーん!」と呼ぶ声に必死で応えていました。とにかくきみは楽しそうで、これが最後の遊園地になることも知らずに、いや、今日が最後の日であることも知らずに、元気いっぱいに走っては、乗り物をハシゴしていた。
きみが楽しげであればあるほど心は痛んで、でも、心が痛めば痛むほど、必死で笑顔を作るようにしました。
やがて急流すべりを乗り終わって、こちらに駆けてきたきみは、満足げな表情で私を見上げつつ、手をつないでニコニコしながらこう言いました。
「もういいよ、お父さん。もう、お母さんのところに行こ」きみは気づいていたんやね。きみを抱いたまま、ムリヤリ、父親の私がこの世を去ろうとしていたことを、なぜか知っていたんやね。
この言葉で、私はハッと目が覚めました。私はこんなことを言った。
「あほ!お母さんに怒られるぞ、ミサト!いつか、お母さんがご飯作って待っているのに、迎えに来てくれたオマエと駅前の焼鳥屋に寄り道した時みたいに、『そんな勝手なことするんやったら、二人で出て行きなさい!』って。お母さんスネるぞ!スネたらひつこいぞ?!」
こう言うときみは…、お葬式の日以来、お母さんのことでは全く泣かなかったミサトは、セキを切ったように大きな声で泣き出したね。24年前のあの日のことを、きみは覚えていないと言います。
でも、きみに子供が、そう、私とお母さんにとっての孫ができて成長したら、あの遊園地にみんなで行こう。お母さんの分も入園券をちゃんと買って、みんなでメリーゴーランドに乗ろう。
そしてみんなで、思いっきり笑おうな。ミサト、本当におめでとう。後日、大将に話を聞きました。大将はその日、京阪電車に娘を抱いて飛び込もうと思っていたそうです。
心がズタズタに切り裂かれ、立ってるだけでしんどかったそうです。ずっとしゃがんでいたかったけれど、「娘にとっても最後の日。娘を楽しませないとあかんから」という思いで、必死に立って必死で笑っていたそうです。
大将はこう言いました。「無理やりだけど、娘のために一日笑っていた。引きつり笑いや。でも笑ってたから、こっちの世界に大きな力で引き戻された気がすんねん」
「俺、あそこで笑ってへんかったら、絶対今ここにおれへん。きっと誰でも、心の底から笑えることが、人生でたまにでもあったら何とかなるわ、橋本君」
とても説得力のある言葉でした。娘さんもすごかった。ほんとは笑えるような精神状態じゃなかったのかもしれないけれど、一生懸命にお父さんの顔を見て一日中笑ってた。
そして、夕焼けに染まる頃、遊園地の門を少し出たところで二人は泣き笑いのくしゃくしゃの顔で、抱き合って家に帰ったそうです。
僕はこの大将の「ラブレター」から、笑顔や笑うことの大切さを教えてもらいました。
そして、「これを多くの人に伝えるのが自分の使命」と思うようになりました。人と人とのつながりや絆、愛情、誰かを愛する気持ち、そんな大事なものほど人の目には見えません。
でも、こうした手紙を読むと、それがはっきりと見えてくるんですね。手紙を通して、僕はたくさんの見えないものを信じられるようになりました。
[はしもと まさと]
大阪芸術大学芸術学部放送学科卒業
お笑いのプロのノウハウを生かして、企業研修などで「お笑い研修プログラム」を実施。
コミュニケーション能力を指導する。
2013年より「涙活」を手掛け、その活動はNHKなど、多くのメディアで取り上げられている。
【日本講演新聞 2024(令和6)年5月6日号】より